シャドーイングを半年続けているのに、いまだに英語のニュースが聞き取れない。そう相談されたとき、私はまず「ディクテーションはやりましたか」と聞き返します。
私は英語を人に教える側にいるコーチで、学習者の課題を分解してトレーニングを割り当てる仕事をしています。
この記事では、シャドーイングとディクテーションのどちらを先にやるべきかを、英語コーチング各社が公式サイトに書いている内容を2026年9月11日に確認したうえで並べます。
公式に書かれていなかった項目は、それらしい理屈で埋めずに「公式ページには記載がありませんでした」とそのまま書きます。
金額を出す箇所はすべて公式の表記どおり、税込か税抜かを付けて書きます。
読み終えたときに、「今日の自分はどちらから始めるべきか」「その判断をどの材料で下すのか」が自分で決められる状態を目指します。
【結論】シャドーイングとディクテーションは、音が聞き取れない段階ならディクテーションが先です
結論から書きます。順番は「どちらが優れているか」では決まりません。いまのあなたが英語のどこでつまずいているかで決まります。
この判断の根拠になる並びを、ENGLISH COMPANY が公式サイトの「高密度学習」のページに、学習フェーズという形で公開しています。
| 公式の学習フェーズ | そのフェーズの状態 | 割り当てられているトレーニング |
|---|---|---|
| Phase 1 | ゆっくり読めば理解できる | チャンクリーディング/サイトトランスレーション |
| Phase 2 | すばやく読めるが、音になると聞き取れない | ディクテーション(音声変化のルールを覚えて繰り返す) |
| Phase 3 | 音声知覚はできているが内容理解が追いつかない | プロソディー・シャドーイング |
| Phase 4 | 内容理解はできるが次の行動に移れない | コンテンツ・シャドーイング |
公式の並びでは、ディクテーションが Phase 2、シャドーイングが Phase 3 と Phase 4 に置かれています。つまり公式の設計上は、ディクテーションのほうが手前にあります。
ただし、この並びは「全員がこの順で進む」という意味ではありません。同じページには「現在地(=学習フェーズ)によって最適な学習は異なります」と書かれています。
- 英語の音が単語として分解できていない → ディクテーションが先
- 音は拾えるが、意味の処理が追いつかない → シャドーイングが先
- そもそも文字で読んでも理解できない → どちらでもなく、読解と語彙が先
3つ目が抜け落ちがちなので、先に書いておきます。公式ページには「リーディングがままならない状態でリスニング練習を繰り返すことは最短距離とは言えません」という一文があります。
出典はENGLISH COMPANY の高密度学習ページで、2026年9月11日に確認しました。
シャドーイングとディクテーションの目的の違い|公式が分けている「音声知覚」と「理解の処理」
同じ「リスニングの練習」と呼ばれていても、この2つは鍛えている場所が違います。ここを混ぜると、順番の議論そのものが成立しません。
公式の定義をそのまま引きます。ディクテーションは「聞こえた英文を紙に書き取るトレーニング。自分が聞き取れていない箇所やその傾向を発見し、聞き取りの精度を高めていける」と説明されています。
一方、プロソディー・シャドーイングは「流れる音声のあとに続いて少し遅れてリピートしていくシャドーイングのうち、音声だけに集中して行なうもの。音声知覚の自動化が促される」と書かれています。
| 比べる観点 | ディクテーション | シャドーイング |
|---|---|---|
| 手を動かすか | 書く(紙・アプリ) | 声に出す |
| 公式が置いている狙い | 聞き取れていない箇所の発見と、聞き取りの精度 | 音声知覚の自動化(プロソディー)/理解の処理の自動化(コンテンツ) |
| 結果が目に見えるか | 書けなかった語がそのまま残るので見える | 録音しない限り自分では見えにくい |
| 1本あたりの負荷 | 止めながら進むので時間がかかる | 音声に合わせるので時間は音源の長さどおり |
| 公式が置いているフェーズ | Phase 2 | Phase 3・Phase 4 |
言い換えると、ディクテーションは「診断」寄りの道具で、シャドーイングは「自動化」寄りの道具です。診断が済んでいないのに自動化から入ると、何を自動化しているのか分からないまま時間だけが過ぎます。
ENGLISH COMPANY の特長ページには、もっと直接的な例が載っています。「リスニングができない」という悩みに対して、非効率な学習法として「リスニングができないからたくさん聞く」「英会話していれば自然に耳が慣れるだろう」「とりあえず毎日シャドーイング」の3つが並べられています。
そのうえで、課題を「単語を知らない」「音声変化が分からない」「文法は分かるが処理が遅くてついていけない」の3つに分解し、それぞれに「単語学習」「ディクテーション」「コンテンツシャドーイング」を割り当てる、という図が置かれています。
公式が「とりあえず毎日シャドーイング」を非効率な学習法の例として名指ししている点は、この記事でいちばん重い事実だと思います。
出典はENGLISH COMPANY の特長ページです。
ディクテーションの手順|シャドーイングの前に「書けなかった語」を炙り出す工程です
ディクテーションは、書き取ること自体が目的ではありません。書けなかった箇所が一覧として残ることが目的です。
公式が書いているのは「聞こえた英文を紙に書き取る」「自分が聞き取れていない箇所やその傾向を発見し、聞き取りの精度を高めていける」という2点です。具体的な回数や1日の分数は、私が確認した範囲の公式ページには書かれていませんでした。
そこで以下は、私が指導の現場で使っている手順です。公式の記載ではなく、私のやり方として読んでください。
- 30秒から60秒の音源を選ぶ(長いほど挫折します)
- 一文ずつ止めて、聞こえたとおりに書く。分からない箇所は空欄にして先へ進む
- 3回まで聞き直す。4回目以降は同じところで止まるだけなので打ち切る
- スクリプトと突き合わせ、空欄と誤記に印をつける
- 印がついた箇所を「知らない単語」「知っているのに聞こえない音」の2つに仕分ける
5番の仕分けが、この工程の全部です。ここで「知っているのに聞こえない音」の側に偏っていたら、それが音声変化であり、公式が Phase 2 と呼んでいる状態にあたります。
音声変化について、公式は「ネイティブ特有の省エネ型の発音。法則性を理解して発音練習を繰り返すことで、聞き取りが楽になる」と説明しています。
逆に「知らない単語」の側に偏っていたなら、ディクテーションを続けるよりも語彙の作業へ戻ったほうが早いです。公式の図でも「単語を知らない」という課題には「単語学習」が割り当てられていて、ディクテーションではありません。
つまりディクテーションは、シャドーイングの前段であると同時に、「そもそもリスニングの問題ではなかった」ことを発見する装置でもあります。
シャドーイングの手順|公式では Phase 3 と Phase 4 で中身が入れ替わります
シャドーイングを一種類だと思っていると、順番の議論を間違えます。公式は2種類に分けています。
| 種類 | 公式の説明 | 置かれているフェーズ |
|---|---|---|
| プロソディー・シャドーイング | 音声だけに集中して行なう。音声知覚の自動化が促される | Phase 3 |
| コンテンツ・シャドーイング | 意味や内容を思い浮かべながらリピートする。負荷は高いが、理解の処理の自動化が促される | Phase 4 |
同じ音源を口に出していても、「音だけを追う」のか「意味を浮かべながら追う」のかで、鍛えている場所が違うということです。
そして公式の並びでは、音だけを追うほうが先で、意味を浮かべながら追うほうが後です。
ここで多いつまずきが、Phase 2 の人がいきなりコンテンツ・シャドーイングをやってしまうことです。音が拾えていないのに意味を浮かべようとするので、口も回らず意味も浮かばず、ただ疲れます。
シャドーイングの手順そのものを、ステップに分けて公開しているサービスもあります。ENGLISH COMPANY が開発したアプリ「シャドプラス」です。
- STEP 1 単語|英文に含まれる重要な単語やフレーズについて、意味と発音を確認します
- STEP 2 チャンク|意味のまとまり(チャンク)ごとに区切られた英文を用います
- STEP 3 リピーティング|モデル音声に続いて、チャンクごとに意味を想起しながら音読練習をします
- STEP 4 シャドーイング|内容がしっかりと理解でき、リピーティングもできるようになった状態で取り組みます
公式のコピーは「シャドーイングは準備が9割。」です。4ステップのうち、シャドーイングそのものは最後の1つしかありません。
なお、シャドプラスの公式ページ全文を確認しましたが、「ディクテーション」という語は1件もありませんでした。このアプリの4ステップにディクテーションは含まれていない、ということです。
出典はシャドプラスの公式サイトです。
シャドーイングとディクテーションのどちらを先にやるか、3つの自己診断で決めます
ここからは公式の記載ではなく、私が体験授業や面談の場で使っている判定です。5分あれば自分でもできます。
診断1は「スクリプトを見ながら聞けば、全部分かるか」です。
スクリプトを見ても意味が取れないなら、リスニングの問題ではありません。読解・語彙・文法の側に戻ります。公式の図でいえば Phase 0 から Phase 1 の領域です。
診断2は「スクリプトを見れば分かるのに、音だけだと分からない箇所があるか」です。ここに該当するなら、ディクテーションが先です。
この状態こそが、公式のいう「すばやく読めるものの、音になると聞き取れない」Phase 2 です。
診断3は「音は全部拾えるのに、話が終わる頃には最初のほうを忘れているか」です。
ここに該当するなら、ディクテーションを続けても伸びしろが小さいので、シャドーイングが先です。公式のいう「音の聞き取りはなんとかできるものの、内容理解が追いついていない」Phase 3 にあたります。
| 診断の結果 | 先にやるトレーニング | 対応する公式フェーズ |
|---|---|---|
| スクリプトを見ても意味が取れない | 語彙・読解(どちらでもない) | Phase 0〜1 |
| 見れば分かるが、音だと分からない | ディクテーション | Phase 2 |
| 音は拾えるが、意味が追いつかない | プロソディー・シャドーイング | Phase 3 |
| 意味は追えるが、返答に移れない | コンテンツ・シャドーイング | Phase 4 |
シャドーイングとディクテーションの順番を逆にすると、何が起きるのか
順番を逆にしても英語に触れてはいるので、まったくの無駄にはなりません。問題は「時間あたりの効き目が落ちる」ことと「自分の課題が見えなくなる」ことです。
Phase 2 の人がシャドーイングから入ると、音を拾えていない箇所を口だけで通過してしまいます。ここが厄介で、口は動いているので「できている感じ」がします。
ディクテーションであれば、聞き取れなかった箇所は空欄として紙に残ります。ごまかしが効きません。
私が「診断が先、自動化が後」と言い続けているのは、この非対称性があるからです。ディクテーションは間違いが残り、シャドーイングは間違いが消えます。
もっとも、シャドーイングの側にもごまかしを潰す仕組みはあります。録音して人に聞いてもらう方法です。
シャドプラスの公式ページには、添削つきのプランについて「専任のシャドーイング添削チームが、あなたの音声を細かくチェックし、発音・音声変化・リズムのズレを的確に指摘」と書かれています。
添削で指摘される項目に「音声変化」が入っている点に注目してください。ディクテーションで見つけるはずだった論点を、添削という別の入口から拾いにいく設計になっています。
シャドーイングとディクテーションを1日の学習にどう割り振るか
時間の割り振りについて、各社の公式サイトが出している数字を先に並べます。ここは推測を混ぜず、書いてある数字だけを置きます。
シャドーイングだけなら1日15分から、学習全体としては1日1時間から1時間半。これが各社の公式表記です。
ディクテーションについて「1日何分」と書いている公式ページは、私が確認した範囲では見当たりませんでした。ですので分数は書きません。
代わりに、私が現場で使っている目安を書きます。ディクテーションは「音源30秒ぶんを1セット」で数えます。分ではなく音源の長さで数えると、その日の集中力に左右されにくくなります。
- Phase 2 の時期|ディクテーション 2セット+直後にその音源でプロソディー・シャドーイング
- Phase 3 の時期|プロソディー・シャドーイング中心。ディクテーションは週1回の点検に落とす
- Phase 4 の時期|コンテンツ・シャドーイング中心。音源は初見のものに切り替える
Phase 2 の時期に「ディクテーションした音源をそのままシャドーイングする」のは、私がよく出す宿題です。書いて穴を見つけた直後なので、どこを意識して口に出せばいいかが分かった状態で音に乗れます。
つまり、この2つは対立する選択肢ではなく、同じ音源に対する前半と後半として組めます。
シャドーイングとディクテーションを扱うサービスを、公式情報だけで並べました
独学で順番を決めるのが難しいのは、自分のフェーズを自分で判定しなければならないからです。そこを他人にやらせるのがコーチングという商品です。
STRAIL の公式サイトには、まさにこの記事のテーマそのものを指す一文があります。
「シャドーイング、ディクテーション、音読、多読、パターンプラクティス……その他いろいろなトレーニングメソッドを、そのメソッドの意図と効果と、そしてなによりいまのあなたの課題をきちんと把握した専門コンサルタントが『処方』します」
「処方」という言葉が使われている点が、この業界の考え方をよく表しています。同じ薬でも、症状が違えば出す順番が変わる、という立て付けです。
| サービス | 形式(公式表記) | 金額(公式表記・すべて税込) |
|---|---|---|
| ENGLISH COMPANY パーソナルトレーニングコース | 週2回90分のトレーニングを3ヶ月 | 入会金55,000円+受講料561,000円 |
| 同 180日間プラン(週1回トレーニング) | 週1回のトレーニングを6ヶ月 | 入会金55,000円+受講料679,800円 |
| STRAIL ビジネス英語コース/TOEIC®L&R TESTコース | 週1回60分(アセスメントテスト30分+面談30分) | 入会金55,000円+受講料(3ヶ月)336,600円 |
| シャドプラス バリュープラン | アプリ(4ステップ学習) | 月額4,378円(税抜3,980円) |
| 同 フィードバックプラン | アプリ+シャドーイング音声の添削 | 月額21,780円 |
ENGLISH COMPANY の公式ページには「ウィークリー英会話ブーストは別料金(月額14,960円)のサービスです」という注記があり、STRAIL 側にも同じ注記が置かれています。
自分のフェーズだけ知りたいのであれば、両社とも無料体験を用意しています。体験だけ受けて判定をもらい、あとは独学に戻すという使い方も成立します。
シャドーイングとディクテーションについて、公式に書かれていなかったこと
ここは、私が公式ページの全文を確認したうえで「書かれていなかった」と判断した項目です。それらしい数字で埋めずに、空欄のまま残します。
- ディクテーションを1日何分やるべきか|公式ページに分数の記載はありませんでした
- 各フェーズに何週間で到達するか|公式は「現在地によって異なる」とだけ書いています
- ディクテーションとシャドーイングを併用した場合の効果の比較|公式ページに数値の比較はありませんでした
- シャドプラスの4ステップにディクテーションが入らない理由|公式ページに説明はありませんでした
とくに4つ目は、私も知りたい項目です。推測は立ちますが、公式が書いていないことを私の推測で埋めると、読んだ人が「公式がそう言っている」と受け取ってしまうので書きません。
なお、ENGLISH COMPANY が掲げている「独学と比べてスコア伸び率は最大3.8倍」という数字には、公式ページに注記が付いています。「2016年~2021年5月時点までの受講生のスコアデータ(n=2442)をもとに作成」というものです。
この数字はコース全体の成果であって、ディクテーションやシャドーイング単体の効果ではありません。この記事の順番の話とは切り離して読んでください。
シャドーイングとディクテーションに関して、よく聞かれる質問
Q. 同じ日に両方やってもいいですか
同じ音源で「ディクテーション→シャドーイング」の順に続けるやり方を、私はよく出します。ただしこれは私の指導上の組み方で、公式ページに「同日に併用すべき」と書かれているわけではありません。
Q. アプリでディクテーションをしてもいいですか
公式の定義は「聞こえた英文を紙に書き取る」です。媒体をアプリに置き換えてよいかについての記載は見当たりませんでした。私自身は、空欄が残って後から見返せるなら媒体は問わないと考えています。
Q. シャドーイングは音源を見ながらやってもいいですか
シャドプラスの公式ページには「シャドーイングでつまづきやすい音声変化のスクリプトのON/OFFが可能です」と書かれています。スクリプトを出す機能自体が公式に用意されている、ということです。
Q. 教材はニュースでいいですか
シャドプラスの公式ページには「The Japan Times Alphaの記事やロイター配信のニュース動画など、本物の英語メディアから厳選した教材」「オリジナル教材も豊富に揃い、初級から上級まで幅広く対応しています」と書かれています。
Q. 速度は落としてもいいですか
同じく公式に「再生速度の調整で、自分のペースから始められます」「チャンクごとの再生で、つまずいた箇所だけを反復できます」と書かれています。速度を落とすこと自体は公式の想定内です。
まとめ|シャドーイングとディクテーションは、優劣ではなく順番の問題です
この記事で確認できたことを、最後に3行にまとめます。
- 公式の学習フェーズでは、ディクテーションが Phase 2、シャドーイングが Phase 3・4 に置かれている
- だから「音が拾えていない段階」ならディクテーションが先、「音は拾えるが意味が追いつかない段階」ならシャドーイングが先
- スクリプトを見ても意味が取れないなら、そもそもどちらでもなく語彙と読解へ戻る
自分のフェーズが自分で判定できないときは、無料体験でその判定だけを受け取るのが最短です。判定さえ手に入れば、あとの練習は独学でも回ります。
本文で参照した公式ページは、ENGLISH COMPANY、STRAIL、シャドプラスの3つで、いずれも2026年9月11日に確認しました。
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