第二言語習得研究という言葉は知っているのに、明日の朝、机の前で何を開けばいいのかが決まらない。この記事は、その一歩だけを埋めるために書きました。
私は英語を人に教える側にいるコーチで、学習者の課題を分解して、やるトレーニングを1つに絞る仕事をしています。
この記事では、英語コーチング各社が公式サイトで公開している「学習フェーズ」と「トレーニングの対応表」を2026年9月11日に確認し、それを日々の手順に落とす形で並べます。
公式に書かれていなかった項目は、それらしい理屈で埋めずに「公式ページには記載がありませんでした」とそのまま書きます。
金額を出す箇所はすべて公式の表記どおり、税込か税抜かを付けて書きます。
読み終えたときに、「今週の自分は9段のうちどこにいて、そこで何を開くのか」が1つに決まっている状態を目指します。
【結論】第二言語習得研究の使い方は「現在地を1つ決めて、その段のトレーニングだけをやる」ことです
結論から書きます。第二言語習得研究を学習に使うというのは、理論を覚えることではありません。やらない学習を決めることです。
この考え方を、いちばん短く言い切っている公式の文章があります。ENGLISH COMPANY の高密度学習ページの一文です。
「人が母語以外の言語を身につけるプロセスやメカニズムを研究する学問『第二言語習得研究』では、言語習得には “効率的な学び順” が存在するとされています」
キーワードは「学び順」です。良い教材かどうかではなく、いまのあなたにとって順番が合っているかどうかを判定する道具として使います。
同じページには、順番を外した例も2つ挙げられています。
- 「リーディングがままならない状態でリスニング練習を繰り返すことは最短距離とは言えません」
- 「リスニングが苦手なままスピーキングを頑張っても効果は薄いものです」
そして「大切なのは、自分の現在地に合わせて最適な学習を選択すること」と続きます。
この記事の残りは、その「現在地」をどう決め、決まったあとに何を開くのかを、公式が公開している段の一覧に沿って書いていきます。
出典はENGLISH COMPANY の高密度学習ページで、2026年9月11日に確認しました。
第二言語習得研究を手順に落とす前に、用語を3つだけそろえます
段の話に入る前に、公式ページで繰り返し出てくる3つの言葉を確認します。ここが曖昧だと、自分がどの段にいるかを判定できません。
| 言葉 | 公式ページでの使われ方 | 自己判定の合図 |
|---|---|---|
| 音声知覚 | 音を聞き取る力。ディクテーションやプロソディー・シャドーイングで養うと説明されている | スクリプトを見れば分かるのに、音だけだと分からない |
| 理解の処理 | 聞き取った音から内容をつかむ働き。コンテンツ・シャドーイングで自動化すると説明されている | 音は拾えるのに、話が終わると最初のほうを忘れている |
| 音声変化 | 「ネイティブ特有の省エネ型の発音。法則性を理解して発音練習を繰り返すことで、聞き取りが楽になる」 | 単語は全部知っているのに、つながると別の音に聞こえる |
この3つを分けて考えられるようになると、「リスニングが苦手」というひとかたまりの悩みが、3つの別々の作業に割れます。
ENGLISH COMPANY の特長ページには、まさにその割り方が図として置かれています。「リスニングができない」という悩みを、「単語を知らない」「音声変化が分からない」「文法は分かるが処理が遅くてついていけない」の3つに分解する図です。
そして、それぞれに「単語学習」「ディクテーション」「コンテンツシャドーイング」が割り当てられています。
同じ図には、非効率な学習法の例として「リスニングができないからたくさん聞く」「英会話していれば自然に耳が慣れるだろう」「とりあえず毎日シャドーイング」の3つが名指しされています。
出典はENGLISH COMPANY の特長ページです。
第二言語習得研究にもとづく学習フェーズ|公式が公開している9段の並び
ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。ENGLISH COMPANY は Phase 0 から Phase 8 までの9段を、状態とトレーニングの対応つきで公開しています。
| 段 | 公式が書いている状態 | 優先するトレーニング |
|---|---|---|
| Phase 0 | 基本文法・基本語彙を忘れている | 基本単語の習得+パターンプラクティス |
| Phase 1 | ゆっくり読めば理解できる | チャンクリーディング/サイトトランスレーション |
| Phase 2 | すばやく読めるが、音になると聞き取れない | 音声変化のルール+ディクテーション |
| Phase 3 | 音声知覚ができている(内容理解は追いつかない) | プロソディー・シャドーイング |
| Phase 4 | 理解の処理がすばやくできる(次の行動に移れない) | コンテンツ・シャドーイング |
| Phase 5 | 記憶にとどめておける(話す・書くが弱い) | コミュニケーション・ストラテジー/クイックライティング |
| Phase 6 | 正確に話し、書くことができる | 公式ページに個別の記載はありませんでした |
| Phase 7 | 流暢に話し、書くことができる | 公式ページに個別の記載はありませんでした |
| Phase 8 | 複雑に話し、書くことができる | 公式ページに個別の記載はありませんでした |
Phase 6 以降には、状態の名前だけが置かれていてトレーニングの記載がありません。ここは埋めずに空欄のまま残します。
なお公式は、この表に「※一例」という但し書きを付けています。全員がこの通りに進むという主張ではない、ということです。
用語の定義も同じページに載っています。使う前に確認しておくと、段の判定がぶれません。
- パターンプラクティス|「身につけたい文法表現が入った例文を少しずつ変化させ、文の型(パターン)を定着させるためのトレーニング」
- チャンクリーディング|「英文を意味のかたまり(チャンク)ごとに理解していく読解法」
- サイトトランスレーション|「チャンクを見た瞬間に意味を思い浮かべて日本語に置き換えていくトレーニング」
- クイックライティング|「決められた時間内で英語を書き続ける練習方法」
- コミュニケーション・ストラテジー|「コミュニケーション上の問題にうまく対処してスムーズに意思疎通するための方略」
第二言語習得研究の使い方①|Phase 0から1で、文字の側を先に片づけます
ここを飛ばして音の練習に行く人がいちばん多いので、最初に置きます。判定は簡単で、「スクリプトを見ながら聞いて、全部分かるか」の一問です。
スクリプトを見ても意味が取れないなら、それはリスニングの問題ではありません。文字の側、つまり語彙と文法と読解速度の問題です。
公式が Phase 0 に置いているのは「基本単語を習得しつつ、英語ネイティブのように瞬間的に英語が使えるようにパターンプラクティスに取り組みます」です。
Phase 1 の判定はもう一段細かくて、「返り読みをしているか」です。公式の記載は「英語をきれいな日本語に訳そうと『返り読み』をして、スピーディーに読めていない状態です」となっています。
この段の対処が、チャンクリーディングとサイトトランスレーションです。英語の語順のまま読めるようにする、という狙いが公式に明記されています。
ここで私が現場でよく出す確認は、時間を測ることです。公式の記載ではなく私のやり方ですが、1分あたり何語読めたかを毎回記録しておくと、Phase 1 を抜けたかどうかが自分で分かります。
文字の側が片づくと、そこから先の音の練習はまったく別物になります。逆に言えば、ここを飛ばした状態で音の練習をしても、判断材料が増えません。
第二言語習得研究の使い方②|Phase 2から4で、音を聞き取る側を作ります
3つの段が並んでいますが、やることは「書く」「音だけ追う」「意味を浮かべて追う」の3つに分かれています。混ぜないのがコツです。
| 段 | やること | 公式が書いている狙い |
|---|---|---|
| Phase 2 | ディクテーション(書き取り) | 「聞き取る力『音声知覚』を養います」 |
| Phase 3 | プロソディー・シャドーイング(音だけ追う) | 「音声知覚を自動化し、理解の処理に脳のリソースをまわせるようにします」 |
| Phase 4 | コンテンツ・シャドーイング(意味を浮かべて追う) | 「理解の処理を自動化し、脳に余裕をつくれるようにします」 |
公式の言葉づかいで面白いのは、Phase 3 と Phase 4 がどちらも「自動化」で説明されている点です。自動化する対象が、音声知覚から理解の処理へ移っています。
つまりこの3段は、「脳の中で手作業でやっていることを、順に手放していく」という一本の線になっています。手放す順番が、音 → 意味 という並びです。
この段でつまずく人の典型が、Phase 2 の状態のままコンテンツ・シャドーイングに手を出すことです。音が拾えていないのに意味を浮かべようとするので、口も回らず意味も浮かびません。
ちなみに、この段を1本のアプリに閉じ込めた商品も出ています。ENGLISH COMPANY が開発したシャドプラスで、公式のコピーは「シャドーイングは準備が9割。」です。
シャドプラスの4ステップは「単語」「チャンク」「リピーティング」「シャドーイング」です。公式サイトには「何をどの順番でやればいいか迷うことなく、一つひとつのステップが次の土台になる」と書かれています。
この4ステップの並びも、語彙 → 意味のまとまり → 音読 → シャドーイングという順で、上の表と同じ考え方でできています。
出典はシャドプラスの公式サイトです。
第二言語習得研究の使い方③|Phase 5以降で、出す側へ切り替えます
読む・聞くの段が終わってから、話す・書くへ移る。この順番が、公式の9段のいちばん大きな構造です。
Phase 5 の状態について、公式は「読む・聞くのスキルはある程度身についたが、まだ英語をうまく話したり書いたりできない状態です」と書いています。
ここで割り当てられているのが、コミュニケーション・ストラテジーの学習とクイックライティングです。
クイックライティングの狙いとして「日本語を介さずに英語をアウトプットする回路が鍛えられ、流暢性が向上する」と公式に書かれています。話す練習の代わりに書く、という発想です。
コミュニケーション・ストラテジーについては「フレーズ学習と組み合わせることで、テンポよく自然なやり取りができるようになる」と説明されています。
言い換えれば、Phase 5 でやるのは「英語力を上げる練習」ではなく「詰まったときの逃げ方を仕込む練習」です。
英会話レッスンを入れるのに向いているのも、この段からだと私は考えています。Phase 2 の人が英会話を増やしても、聞き取れない時間が増えるだけになりがちだからです。
ENGLISH COMPANY 側も、英会話レッスンを「課題発見型」と呼んで、弱点の分析材料として位置づけています。公式の表現は「英会話を『話して終わり』にしない、より高い成果を出すための英会話の形です」です。
第二言語習得研究の使い方を、1週間の予定表に落とします
ここからは公式の記載ではなく、私が現場で使っている組み方です。公式の段に、公式が出している学習時間の数字を重ねたものです。
まず、各社が公式に書いている自主学習の時間を並べます。
| 公式の出どころ | 公式の表記 |
|---|---|
| ENGLISH COMPANY 特長ページ | 「自主学習は1日たったの1.5時間」「一般的な英語コーチングで必要とされる自主学習は1日3時間」 |
| ENGLISH COMPANY 高密度学習ページ | 「多くのコーチングスクールが1日3時間前後の自宅学習を課すなか、ENGLISH COMPANYが求めるのは多くても1日1時間から1時間半程度」 |
| STRAIL トップページ | 「1日1時間で結果を出す “超効率型”英語コーチング」 |
| シャドプラス 公式サイト | 「1日15分から取り組める」 |
1日1時間を前提に組むなら、私は「その段のトレーニング40分+語彙20分」という配分にします。語彙だけはどの段でも切らしません。
- 月・水・金|いまの段のトレーニング40分(例:Phase 2ならディクテーション)+語彙20分
- 火・木|同じ音源を使った復習30分+語彙20分
- 土|段の判定をやり直す日。スクリプトを見ずに新しい音源を聞いて、どこで詰まったかを記録する
- 日|休む(記録だけ見返す)
土曜に段の判定をやり直す枠を置いているのが、この表のいちばんの狙いです。段が変わったのに同じ練習を続けている、という状態を防げます。
なお、各段に何週間で到達するかについては、公式ページに記載がありませんでした。ここは数字を作らずに空けておきます。
第二言語習得研究を看板に掲げているサービスを、公式情報だけで並べました
自分の段を自分で判定するのが、この方法のいちばん難しいところです。そこを外注する商品が、英語コーチングと呼ばれているものです。
STRAIL の公式サイトのよくある質問には、コンサルタントの仕事がこう書かれています。
「コンサルタントは、第二言語習得研究などの知見をもとに、学習課題(弱点)の特定と分析を行い、それをもっとも効率的に解決するためのトレーニングメニューのご提供を行います」
同じページには「属人的な英語習得の経験に基づく方法、有名人がお薦めするなんとなく効果のありそうな方法、インターネット上でのエビデンスのはっきりしない方法を排し、学問的に意味のあるとされている方法をご提案できます」とも書かれています。
サービスの中身と金額を、公式の表記のまま並べます。
| サービス | 回数・期間(公式表記) | 金額(公式表記・すべて税込) |
|---|---|---|
| ENGLISH COMPANY パーソナルトレーニングコース(90日間) | 週2回90分のトレーニングを3ヶ月間 | 入会金55,000円+受講料561,000円(合計616,000円) |
| 同(180日間・週1回) | 週1回のトレーニングを6ヶ月間 | 入会金55,000円+受講料679,800円(合計734,800円) |
| STRAIL ビジネス英語コース | 週1回60分(アセスメントテスト30分+面談30分)/3ヶ月・6ヶ月 | 入会金55,000円+受講料(3ヶ月)336,600円 |
| STRAIL TOEIC®L&R TESTコース | 週1回60分/3ヶ月・6ヶ月 | 入会金55,000円+受講料(3ヶ月)336,600円 |
| シャドプラス バリュープラン | アプリでの4ステップ学習 | 月額4,378円(税抜3,980円) |
両社の公式ページには、一般教育訓練給付制度の対象であるという記載があります。ENGLISH COMPANY 側は「入会金+受講料の20%支給」「最大10万円キャッシュバック」と書かれています。
制度を使った場合の実質負担額も公式に出ていて、90日間が516,000円、180日間が634,800円(いずれも税込・一括払いの場合)となっています。
また両社とも30日間返金保証があり、STRAIL 側は「受講開始日から30日以内は、返金保証(初回納入受講料のみ)が適用可能です」「コンサルティングセッション消化回数が4回以内が条件です」と条件まで公開しています。
なお、ウィークリー英会話ブーストは両社とも別料金(月額14,960円)である旨が公式に注記されています。総額を見積もるときは足し忘れないでください。
第二言語習得研究の使い方で、私がよく見る3つの間違い
ここは私の指導経験からの話で、公式ページの記載ではありません。そのつもりで読んでください。
1つ目は、段を2つ同時にやろうとすることです。ディクテーションもシャドーイングも多読も単語も全部やる、という予定表は、だいたい2週間で崩れます。
この方法の効き目は「やることを1つに絞れる」ところから来ています。全部やるなら、段の判定をした意味がなくなります。
2つ目は、段の判定を一度きりで済ませることです。数週間で状態は動くのに、最初に決めた練習を3ヶ月続けてしまう人がいます。
この点について、ENGLISH COMPANY の特長ページは通常の英語コーチングとの違いとして「初回セッションで学習プランを作成」して「週1回の面談で学習状況チェック」するだけの形を挙げ、自社は「週2回のセッション」で「常に最適な学習プランとトレーニングにアップデート」すると書いています。
判定をやり直す頻度そのものが商品の差になっている、ということです。独学でやるなら、その枠を自分で予定表に入れるしかありません。
3つ目は、理論の本を読むこと自体が学習だと思ってしまうことです。第二言語習得研究の入門書を3冊読んでも、英語の音は聞こえるようになりません。
理論は「今日やらないことを決める」ためだけに使います。決まったら本を閉じて、その段のトレーニングを開いてください。
第二言語習得研究について、公式に書かれていなかったこと
公式ページの全文を確認したうえで、書かれていなかった項目を並べます。ここは推測で埋めません。
- 各段に何週間・何ヶ月で到達するか|記載はありませんでした
- Phase 6・7・8 で優先するトレーニング|状態の名前だけで、トレーニングの記載はありませんでした
- 段の判定に使うテストの中身|STRAIL は「アセスメントテスト30分」と時間は書いていますが、問題形式の記載は見当たりませんでした
- この9段が、どの研究のどの理論に対応しているか|個別の論文名の記載はありませんでした
4つ目は、この記事を書きながらいちばん確認したかった項目です。公式に出典が書かれていない以上、「この段は特定の理論に基づいている」と私の側で補うことはしません。
数字として公式に出ているのは、ENGLISH COMPANY の「独学と比べてスコア伸び率は最大3.8倍」という表記です。これには「2016年~2021年5月時点までの受講生のスコアデータ(n=2442)をもとに作成」という注記が付いています。
この数字はコース全体の結果であって、9段の並びそのものの検証結果ではありません。トレーナーの質・面談の頻度・教材など、複数の要素がまとまって出た数字だと読むのが妥当です。
公式が書いていない部分を私が埋めないのは、意地悪でも手抜きでもありません。埋めた瞬間に、読んだ人がそれを「公式の見解」として受け取ってしまうからです。
この記事で「公式に書かれている」と書いた箇所は、いずれも各社のページの本文をそのまま引いたものです。引用していない部分は、私の指導経験からの話だと明記しています。
まとめ|第二言語習得研究の使い方は、やらないことを決める作業です
この記事で確認できたことを、最後に4行にまとめます。
- 公式は Phase 0 から Phase 8 までの9段を、状態とトレーニングの対応つきで公開している
- 使い方は、その9段のうち自分がいる1段を決めて、その段のトレーニングだけをやること
- 判定は週1回やり直す。段が動いたら練習も入れ替える
- 公式が書いていない箇所(到達期間・Phase 6以降の中身)は、埋めずに空けておく
段の判定だけを人に任せたいなら、両社とも無料体験を用意しています。判定を1回もらってから独学に戻す、という使い方でも十分に元は取れます。
本文で参照した公式ページは、ENGLISH COMPANY、STRAIL、シャドプラスの3つで、いずれも2026年9月11日に確認しました。
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